『両輪』『両利き』のビジネスモデルで、変化をリードしていく企業に
公開日:2020年12月9日
本学で、毎週行っている『企業論特別講義』。日本を代表する各業界の企業のトップを講師に招き、なかなか知ることのできないビジネスの本質を学びます。
第8回目となった12月2日(水)の講師は、株式会社イートアンドホールディングス取締役社長・グループCOOの仲田浩康氏。食文化とともに進化する『両輪・両利き』のビジネスモデルについてお話しいただきました。
ビジネスモデルとして注目を浴びる、独自の『両輪経営』
『おなかいっぱいの幸せと。』の理念のもと、日常のあらゆる食のシーンを想定し、新しい食文化を創造する『食のライフプランニングカンパニー』を目指す同社。その最大の特徴は、『両輪経営』です。『大阪王将』や『R Baker』などの外食事業とともに、群馬県に国内最大級の冷凍食品製造工場を持つなど食品事業も展開。外食企業でありながら、メーカーとしてもしっかりとした売上を作っている会社はほかにありません。そのため、この『両輪経営』はビジネスモデルとしても注目を浴びています。
『相乗効果』と『リスクヘッジ』で、変化への適応力を高める
『両輪経営』の最大の利点は、『相乗効果』と『リスクヘッジ』です。
『大阪王将』というブランドを使い、全国のスーパーや生協に冷凍食品を販売。それによって知名度が上がるため、地方に店舗出店をする際にお客さまにきてもらいやすくなります。また、自社内で商品開発を行う一般の食品メーカーと違い、店舗で直接聞いたお客さまの声を商品作りに生かすことができる、という強みを生み出しているのです。
一方、コロナ禍で外食事業は大打撃を受け、利益はマイナスに。しかし、そのような状況下でも、自宅で料理をする人が増え、食品事業の売上が大きくアップ。「外食事業の赤字をカバーすることができた」と、仲田氏。こうした『相乗効果』と『リスクヘッジ』により、変化への適応力が高くなるのです。
ニッチな領域でイノベーションを。それが小さい企業の戦い方
家庭用冷凍食品メーカーの売上ランキングでは9位の同社。上位を占める大手の会社には大きく差をあけられています。大企業は、広告戦略に多大な資金を投じ、消費者に直接リーチすることができますが、資金力のない会社はそのような戦い方はできません。ではどうするのか。仲田氏は、「ニッチな領域でイノベーションを起こし、ニッチトップを目指す」と言います。たとえば、『羽根つき餃子』。油いらず、水いらず、フタいらず、さらにタレ付き、というイノベーションを起こし、売上は年間100億円に。また、『ぷるもち水餃子』では、今までなかった冷凍水餃子市場を自らで創造し、シェア6割超、売上ナンバーワンに。現在も、『ニッチトップ』を目指すため、絶え間ない挑戦を続けています。
今後は、香料・甘味料・着色料・保存料・化学調味料なし、食材のおいしさを生かした『5フリー』の商品を大きく増やしていこう、と考えているそうです。「これは、5年後、10年後、世の中のスタンダードになる。これが、中小企業の戦い方」だと、仲田氏は熱く語りました。
二兎を追う『両利きの経営』でさらなる発展を
「企業には、既存の収益基盤を強化する『深化』と、新しいことにチャレンジし新規の収益基盤を創出する『探索』が必要」と話す仲田氏。しかし、『探索』は成果が見えにくく、行動・投資に踏み切りにくいという現状が。そのため、多くの企業は過去の成功体験から『深化』を優先しがちに。そんななか、富士フイルムは、フィルム市場の縮小に伴い、写真技術をベースに事業を多角化。既存収益基盤の強化に加え、新規収益基盤の創出に活路を見出した『両利きの経営』で成長を遂げました。
イートアンドも、外食事業を磨きあげながら(深化)、食品事業の基盤を創出(探索)する『両利きの経営』に努めています。50年の歴史がある外食事業ではなく『製造業』として株式上場を果たしたのも、『両輪』『両利き』のビジネスモデルゆえ、と言えます。
生き残るのは、変化をリードしていく企業
「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものでも、最も頭のいいものでもない。変化に対応できる生き物だ」という‟進化論”の言葉を引用し、「企業も変化に対応していくことが大切」と話した仲田氏。さらに、「変化に対応していくだけでなく、自ら市場を創りながら、変化をリードしていく企業が生き残っていく」と。そして、最後に学生に向け、次のような言葉を贈りました。
「皆さんも会社を選ぶときに、その会社が何を目指しているのか、他の会社と違うところはどこか、いろいろな側面を見てほしい。また、競合の会社とどういう戦い方をして、どう生き残っていこうとしているのか。そういった側面に興味を持てば、会社選択の範囲も広がっていくと思います」。