当たり前が崩れ、新たな可能性が出現。夢物語が現実に!ープロデュース論ー

当たり前が崩れ、新たな可能性が出現。夢物語が現実に!ープロデュース論ー

公開日:2020年7月1日

プロデュース論

6月18日(木)、特別講義『プロデュース論』の8回目のオンライン講義を実施しました。

今回の講師は、(株)KADOKAWA 2021年室エグゼクティブプロデューサーの玉置泰紀氏。東京ウォーカーや関西ウォーカーといったウォーカーシリーズの総編集長を務めた後、現在は観光系企業や大学と連携して新しい観光のスタイルとして提唱してきた『メタ観光』を浸透させるべく活動されています。
講義の冒頭、玉置氏は「これからは『新型コロナウィルス』という感染症を抜きには考えられなくなる。だからこそ、今の段階で話せることを話したい」と、学生に伝えられました。

新型コロナウィルス感染拡大で不要になった『おでかけ情報』

プロデュース論

最初に玉置氏が紹介したのは、新型コロナウィルス感染症の流行前後での『1日を費やす時間の増減』についてのデータ。Youtubeなどの無料動画やアイドル・タレントのライブ配信の視聴、スマホゲームなどが大幅に伸びている一方、外出を伴うものは軒並み激減。KADOKAWAを代表するおでかけ雑誌‟ウォーカーシリーズ”にも大きな影響が出ているそうで、「紙の雑誌が減っていくなかでもウォーカーシリーズは好調だった。しかし、おでかけ情報が求められなくなったため、同シリーズのはじまりで30年の歴史を持つ東京ウォーカー、九州&横浜ウォーカーの3誌が休刊になることに。こういった現状のなかでは、おでかけ情報系のコンテンツは厳しい」と玉置氏は話されました。
逆に、ゲームの市場は大きく拡大。欧州のゲームメディアが、世界約50カ国の主要ゲーム会社のダウンロード売り上げデータを分析したところ、2020年3月16日~22日の売上は前週比の63%増。玉置氏も「これ以降の伸びを考えるとすさまじい」と言います。

これまでの当たり前が崩れた反面、新しい可能性も

このように、世の中は新型コロナウィルスによって大きく変動しています。そのなかでも甚大な影響を受けたのが、『観光・インバウンド』です。ただ、玉置氏は「これまで当たり前だと思っていたものが当たり前でなくなる反面、新しい可能性も出てくる」と話します。たとえば、オリンピック・パラリンピックをはじめとした巨大人数収容の大型イベントの延期・中止は、一見するとネガティブな影響です。しかしその一方で、「仮想空間を生かしたエンタメがこの時期に一気に伸びている」というポジティブな変化も起こっています。テクノロジーを使い、仮想と現実を組み合わせた新しい社会を考えようという『ソサエティ5.0』、サスティナブルな社会を作ることを目指す『SDG’s』。玉置氏は、「これらに対して、これまではみんなどこかで夢物語だと思っていたが、今回の事態によって現実味を帯びてきている」としたうえで、「ネガティブとポジティブを組み合わせたものこそ、これからの進むべき道」だと話しました。

プロデュース論の延長には『観光・インバウンド』がある

プロデュース論

そんなアフターコロナの時代に重要になってくるのが『メタ観光』だと話した玉置氏。『メタ(=メタフィジック)』とは、自己言及的なもの、という意味。つまり、メタ観光とは『観光のための観光』といえます。今のような状況になる3年ほど前から、メタ観光の浸透に尽力し続けてきた玉置氏は「観光・インバウンドが致命的なダメージを受けている今こそ、メタ観光が活用できるのではないか」と言います。
玉置氏が、メタ観光の可能性としてあげたのが『ポケモンGO』。2017年、ポケモンGOを作った会社・NIANTECは、鳥取砂丘で3日間『Pokemon GO safari zone in 鳥取砂丘』というイベントを開催。約9万人が訪れ、18億円の経済効果があったといわれています。「もちろん、鳥取砂丘はもともと観光名所ではあるけれど、そこに『ポケモンGO』という意味を乗せることでこれだけの人が集まった。これがメタ観光の可能性」と力強く語りました。ひいてはそれは、新しい観光の可能性でもある、と。
『メタ観光』とはつまり、ウェブとリアル、意味のレイヤーを束ね、その束ねたコンテンツを“可視化”すること。玉置氏は「プロデュース論の延長には、観光・インバウンドというものが必ずあると思っている。皆さんも、それを頭の片隅に置いておいてほしい」と。

『自分のため』と『読者のため』が両立した先に生まれるもの

そして後半は、本業でもある『編集』についてのお話へ。編集とは、情報・素材・アイデアを集めまとめあげること。編集者とは、まとめあげるための設計図をつくる人。玉置氏いわく「縁の下の力持ち的な仕事」なのだと。そして、編集とは『自分のため』と『読者のため』の両輪で成り立つ仕事、だと力説されました。ものづくりにはモチベーションが不可欠です。だからまず『自分のため』であることが大事。一方で、商品を作るということは、絶対的に買ってくれる人のことを考えなければいけません。だから、『読者のため』であることも大事なのだ、と。「このふたつは両立できないようにみえるが、これが両立するところにしかいいものは生まれない」。そう断言した後、「ただ・・」と玉置氏は言葉を続けました。「編集の力を使えば、捏造・偏向はたやすくできてしまう。自分のため・読者のため、その狭間でせめぎあっていると、そういうことをやりたくなってしまう。常にそういった誘惑と戦っている。それが編集という仕事でもある」と。

物事を具現化するためには『いらないものを捨てる』こと

プロデュース論

続いて玉置氏が話したのは、編集に欠かせない『構築力』について。「物事を具現化するために一番大事なことは『いらないものを捨てること』。無駄なものを省くことでスペースができ、考える余白ができる。そのうえで、必要なものを効果的に配置していくことが大切」だと言います。自分がやりたい・表現したいと思っているものが、本当はどこに向かいたいのか。編集の仕事は、それを見極めること。そして、「最短距離を選ぶこと」だと。これは、編集の仕事に限ったことではなく、どのような仕事をするにしても役立つ思考だと思います。

自分の主観をごまかさず、言い切ることが大事

最後に、効果的な文章の書き方についてアドバイスされました。「重要なことほど前に出した方がいい。よく5W1H と言われるが、その流れのなかでバランスよくやろうとするより、大事なメッセージを先に出していくこと」だと。そのためには、まずコンセプトやメッセージをしっかり定めることが大事です。また、文章の進むべき道は、見出しに集約されていなければならない、とも。ただ、最近ネット上でよくみられる『見出し詐欺』だけはやったらダメだ、と。「世の中そんなにおもしろいことがあるわけじゃないから、過激な見出しの方が人は見てくれる。だけど、文章にはメッセージが重要。それだけに、見出し詐欺をやることはすごく恥ずかしいということを覚えておいてほしい」と。
これらをしっかり心に留め、自分の主観をごまかさず、言いたいことをしっかり見せ、なおかつ『言い切ること』を大切にしてほしい、と言葉を残されました。

特別講義 新着記事

特別講義一覧を見る

資料請求

大学案内

ページトップ