3つの要素を押さえれば、“ヒット”と“カルチャー”を生み出せる!?ープロデュース論ー

3つの要素を押さえれば、“ヒット”と“カルチャー”を生み出せる!?ープロデュース論ー

公開日:2020年6月4日

プロデュース論

5月28日(木)、特別講義『プロデュース論』の5回目のオンライン講義を行いました。

プロデュース論

今回の講師は、株式会社USEN、株式会社GYAOを経て、現在はLINE株式会社 エンターテイメントカンパニー LIVE事業部副事業部長を務める浅野裕介氏。LINE LIVEアライアンス統括責任者も務める浅野氏は、この“STAY HOME”期間に【LINE LIVE】でフェスを開催するなど、時代に合わせた新たなコンテンツをプロデュースされています。

この日のテーマは、「コミュニケーションとインターネットがどう関わり合いカルチャーを変えていったのか?」。現在の動画のトレンドからヒットにつながる3つの重要要素を紐解くとともに、『プロデュース力』について多角的に解説いただきました。

個々の熱量でどれだけ濃いファンを集められるか

最近、オンライン上でフェスを開催した浅野氏。その過程で『突き抜けたセルフプロデュース力』を痛感したと言います。「アーティストの方々は、機材の準備、見せ方、音声チェック、リハーサルまでほぼ全部自分でやれてしまう。発起人であるm-floのtakuさんの熱量もすごくて、参加した10組以上のアーティストそれぞれの自宅に機材を届けたり、セッティング・打ち合わせをしたり。全部自分たちで作っていった」と。
これこそ、まさに今のエンタメ業界でもっとも重要視されていること。個々の熱量でどれだけの人を、どれだけ濃いファンを、集めていけるか。「発信が自由にできるからこそ、セルフプロデュースしていかないと埋没してしまう。これからは自分でプロデュースできる人が人気になっていくし、ビジネスの世界でも成功していく」と、浅野氏は話します。

昨今、世界では【UGC(=一般ユーザーによって作られたコンテンツ)市場】が急成長。特に海外では、メディア化した個人がファンに対して直接ビジネスを展開したり、個人に広告がつくなど、影響力が拡大。個人が経済圏を形成するまでに。浅野氏は「中国の市場規模が1.9兆円なのに対して日本は500億円とまだまだ小さいが、今後確実に伸びてくる」と力強く語りました。また、「個人の影響力はインターネット上だけではなく、最近話題になった韓国ドラマ『梨泰院クラス』の画期的なヒロイン像にも表れている。“セルフプロデュース”“インフルエンサー”というものが新しいカルチャーの象徴となっている」と。

開発者が遊び心で実装いていた “隠し機能”

日本国内で8200万人が利用、生活インフラとして定着したLINE。リリース以降、コミュニケーションツールとしてさまざまなコンテンツを生み出し続けていますが、そのひとつに動画を使ったファンサービスがあります。LINEで動画サービスがスタートしたのは2013年。当初は、LINE KIDS 動画という子ども向けのサービスでしたが、開発者の“ある遊び心”をきっかけに、2016年、ライブ動画配信プラットフォーム【LINE LIVE】に。「実は、トーク画面にライブを生配信できる機能が隠し機能として実装されていたんです。実際に使ってみると、何十万人という人がトーク画面に集まった」のを機に、テストを重ね、新サービスとして生まれ変わったそうです。「コンテンツのヒットやカルチャーにスマホは外せない。動画においても、スマホ上での動画というのが非常に重要」だといいます。

“バズる”サービスは、必ず若年層から生まれる

プロデュース論

リリース当初の【LINE LIVE】は、番組・時間編成のもと有名人が出演する番組を配信していました。しかし、一般ユーザーへ配信機能を解放したところ・・個人使用が爆発。結果、今ではLINE LIVEは若い人たちが『夢を叶えるステージ』に。「オーディションをして、1位を取ったら雑誌のモデルになれるとか、ファッションショーのランウェイを歩けるとか。オンライン上で配信者についたファンが夢を応援していく。そんな風に、若い人たちがどんどん発信・世の中に出ていく、というカルチャーが時代の流れとしてある」と浅野氏は分析します。また、当初は横型(スマホを横にして見る)だった配信を『縦型でのコミュニケーション』サービスへ移行。「人気になるサービスは、必ず若年層から生まれる。どういうサービス・コンテンツが受け入れられるのか。若年層の人たちの感性・ニーズに常にアンテナを張っておくことが大事」なのです。

ヒットする動画コンテンツに欠かせない“3要素”

現在、日本国内の動画市場は2000億円以上。そのなかで、若い人たちのサービス・コンテンツ利用には『3つの重要要素』があるのだとか。スマホのメディアがメインとなっている現代。「動画とコミュニケーション文化において、押さえておけばヒットに関わることができる」という3要素について、浅野氏はさまざまな事例を元に説明されました。

  1. 『没入感』(引き込まれる)
    『没入感』を構成するのは、① 縦型フォーマット ② 画面占有率の効率性 ③ ビデオ通話のような一人称視点の映像。この3つがキーワードであり、今のカルチャーです。
    同じ動画でも、縦型にすることで画面占有率が高くなり、ビデオ通話をしているような親近感を覚える。画面の向こうのタレントと1対1でコミュニケーションしている疑似体験、それが『没入感』につながります。映画の世界でも「観客が共感できるかどうかは没入感だ」と言われるくらい、最先端で新しい手法です。
  2. 承認欲求・模倣性(認められたい・簡単に取り入れられる)
    自分のアイデンティティが埋没しやすい今の若年層にとって、『自分の名前を呼ばれる』ということが一番承認欲求が満たされる。だから、名前を呼んでくれない芸能人やアーティストより、名前を呼んでくれる “手が届く範囲の”身近な憧れを求める。そして、自分がそのポジションにいくために簡単に取り入れられるものとして、InstagramやTikTokへの動画投稿をする。特殊なスキルがなくても、簡単に模倣できて、簡単にスターになれる、というのが承認欲求を満たすうえでは重要なのです。
  3. 日常・リアル(作られていないもの)

    プロデュース論

    若年層はよりリアル(=本物)を求める傾向があります。「その人だけを見ていたい=その人だけが本物」という意識が強く、“小道具”や“演出”を嫌うため、『ありのままの日常=リアル』を提供していくことが大事。作り手が一方的に視聴者に届けるのではなく複合的に構成していくこと。発信側・受け手側という縦のコミュニケーションだけでなく、受け手同士や発信者の周囲などいろいろなところにコミュニケーションが発生するポイントを作ること。そこから生まれる新しい何か、が『日常・リアル』を構成する重要な要素。

多様化するメディアとコミュニケーションの接点を押さえる

浅野氏は、「今のインターネット環境で、ヒットコンテンツを生み出したり、プロデュースしていくということを考えるうえで大切なのは、若年層への浸透・認知・ヒットをつかむこと。そのために重要なのが、『没入感』『承認欲求・模倣性』『日常・リアル』の要素。自分が携わるものに対しても、自分自身に対しても、この3つをしっかり頭を入れて考えることが重要」とまとめました。

最後に、これから社会に出る学生たちへ、「今までは、メディアといえば“マスメディア”でしたが、今は“パーソナルメディア”“ネットワークメディア”“エンターテイメントメディア”など、メディアが多様化。かつ、すべてのジャンルにコミュニケーションがくっついてくる。それぞれの“メディアとコミュニケーションが発生する接点”をしっかり押さえながら学んでいくことが重要。今の承認欲求が満たされた先にあるのは『自己実現欲求』。皆さんは、その次世代のコンテンツ・サービスを作っていくことになると思うので、今からその視点を持ち、今日話した3つの要素を次のステップで生かしてほしいと思います。これからは『外部からプロデュースする力』と『自己でセルフプロデュースできる力』の両方が求められる、ということを常に頭においておいてください」とアドバイスを送りました。

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